「受け取る楽器」としての耳

「期末テスト」とか「中間テスト」とかの期末テスト。私のテストを受けたことのある人は分かると思うのですが、リスニングテストを行うタイプの変わった音楽教員でして。作り始めてもう10年ぐらいになります。

そもそも、音楽科ってペーパーテストで量れる力って結構限られているんですよね。よくある問いで、(これは私も出しますけど)「作曲者を答えなさい」なんて、これって暗記してくればよくて、音楽を感じ取ったりする力は、授業等で別に評価しなければならないことになります。他の教科がペーパーテストをやっている時に歌ったりリコーダー吹いたりはさすがにできないので、英語等である「リスニング」に落ち着いたわけです。聴かせる環境はできれば生演奏…いや譲ってステレオスピーカーですが、1万歩譲ってCDラジカセ等で音楽を流して、それに対して即時的に自分の考えや感じたことを記述させればいいのかなーと思って作り始めてはや10年。これはもうライフワークと言って過言ではないでしょう。

今回は学年末テスト、かつ転勤してからは初めての聴き取りの作成となりました。放送機器の不調により、全クラスCDラジカセで(!)行いまして、答案を見ていると多種多様、音楽に対しての反応がさまざまでとても嬉しい限りです。「テスト」という緊張状態で最高のパフォーマンスを出そうとしている生徒に課題を課すのってとっても効果的なんですよね。今の子ってひょっとして「ながら聴き」が多くて、じっくり聴いたりすることあまりないんじゃないかしら。このテストって経験を重ねてくると自然と記述が多くなり、自分の言葉で語ることができるようになってきます。

あんまり問題の内容について詳しく書くのはこの場でははばかられますが(リクエストがあればご紹介します。長くなるけど。)、最初に「これから、音楽の聴き取りテストを始めます」というアナウンスを毎回しています。スピーカーのテストのために、その時に音楽をかけてジングルみたいにするんですけど、そのネタを少し紹介します。今回はこれ。

村治佳織さんがCMで「はちすずめ」を弾いているのを見て、ギターってのはこんなにも一瞬のうちに人をもっていってしまうものなのか、と思ったのが確か高校1年生のあたり。この「CAVATINA」は98年発、ギターの名曲や映画音楽などを散りばめた、クラシックギターとすれば入門書のような聞きやすい一枚ではないでしょうかね。今回のテストではCD冒頭、ヨークの「サンバースト」をテストの入りにしました。本校初めての聴き取りということで、耳をチューニングする、耳を覚ます、音楽脳のスイッチをONにする、という役割を担ってもらいました。そうは言ってもフェードアウト含めて30秒程度なんですけどね。

今までもこの聴き取りテストに関して、同僚から様々な意見をもらってきましたが、今回は新指導要領切り替えのタイミングということもあり、これからの教育課題とマッチングする部分もあったのかな、と思います。早い話が、「続けてきてよかったな」と実感しました。過去の聴き取りテストを見直すと「この曲は何拍子か答えなさい」という本末転倒のような出題をしていましたが、今では歌詞を示されたドイツ・リートを一聴し、内容に迫るような出題もしています(だって「魔王」をテストで再度聴いたら、内容を暗記している人の音楽のチカラはどうなるの)。

音楽は人間形成に大きく影響します(たぶん。シュタイナーとかそう言ってる)。生徒が自分の「耳」は優れた受信機である、という気づきを与える機会を作りたいと考えます。聴き取りテストの最後には必ず「どちらが好みか答えなさい」という比較聴取の問題を出しています。「音楽が好き」で満足せず「こんな音楽が好き」という態度も養っていきたいという願いが込められたライフワーク。文字に起こすと薄っぺらいですがこれを夜な夜な吹き込む仕事が一番好きだったりします。

さて、楽しい採点の時間です。

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