ライフワークを持つ年齢

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リスニングテストについての投稿に、なんと数名からお問い合わせいただきました。リクエストに応えて、今まで私がやってきたものをまとめます(コンプライアンスに気をつけながら)。

さて、なぜ聴き取りテストを始めようかと考えたのか、ですが、初任の1年めは授業はTTで三学年12クラス全て入っていたのですが、評価やT1は2年生だけ担当していました。よって、1学年分のペーパーテストを作成していました。そこで、鑑賞領域の評価を付けるにあたって、感想文みたいなのを提出させてそれで評価を下していたのですけど、これって、授業中にやった内容を書くわけで、それはクラス全体の総意みたいなものだなぁって感じたわけです。

クラスで授業をするっていうのは、たくさんの意見や見方・考え方に触れるとても良い場なのですが、そこで形作られた力というのは、評価する身からするととても判断が難しく…例えばクラス合唱を聴いて技能を判定することに近いのではないか…そうすればよく歌うクラスの技能は高くなり、おとなしいクラスの技能は低くなるのか。その答えは否であり、個人の力をしっかり計るには公平な場で公平な手段でされるべきです。

私は技能については個人テストを行っています。その中で一定の基準を設け、こちらで適宜指導したのちに個人テスト。歌だったら、正しい身体の使い方で歌っているか、きちんと旋律が分かるように歌っているか、などです。同時に表現の創意工夫についても見取ります。どのように歌おうとしているか、強弱などの工夫が見られるか、などです。しかし、やろうとしていても技能の力が足りずに表現に至らない生徒もいます。そのようなケースのために、「こう歌いたいシート」を作成させておき、そこと個人テストの表現を合体させて第2観点の評価をしています。

創作・音楽づくりについても同じことが言えます。こちらはもっと個人的な、内的な力なので、教師がよく足場がけをすることが前提ですが、発案したものを汲み取り、それをどう表すかは、実際に演奏してもいいし、ワークシートに記入してもいいし…ということで見取ります。

さて、肝心の鑑賞の能力ですが、これを評価するにあたって、鑑賞領域の授業で「何を学んでいるか」を教師と生徒の間できちんとまとめられていることがとても大切なことです。教材に合わせて「知覚・感受」を促したり、そこで感じ取ったことを交流したり、そこで得た聴き取り・感じ取ったものを「紹介文」のような形でまとめたりすることが一般的で、その「紹介文のようなもの」だけで鑑賞の能力を計ることにだんだんに疑問を感じてきたわけです。

定期テストは生徒たちが一番のパフォーマンスを発揮しようとする場です。直前には部活動などの諸活動も停止され、テストに集中するように学校全体も促しています。この生徒たちの食いつく力を活用しない手はありません。授業ではリラックスしてワークシートに記入していますが、もちろんこちらも評価材料にしながら、本気で個人が挑んでくる鑑賞の時間としてテストを作成しています。後々のことですが、、これは鑑賞だけでなく、表現領域の力も計れることが分かりました。そんなこんなで、1年目の3学期から聴き取りテストをはじめました。断っておきますけど、最初は迷走しております…

【2011年度、3学期の2年生】

さてこの問題の問1と問2ですが、これは教材としてどこでも教えていないものです。よって本来はNGの問題ですね。問3はかろうじて混声合唱を勉強しているので、この問は成立します。問4と問5はフーガ形式の問題。このあたりは鑑賞の能力の評価にうまくはまってくるのかと思います。

【2012年度 1学期の3年生】 

3学年分のテストを作ることに疲弊したのでしょう。全学年共通の問題となっています。しかしながら、問1は「リズム」の概念をきちんと生徒が知っているか、という問題。これって、授業では必要な力でも、リズムの捉えは人それぞれ。この問題は何を評価するのかよくわからない状態です。音楽Cは二部形式だったかな?きちんと教えたとは言い難い内容です。あまり良くない聴き取りですね。 

【2012年度 2学期の1年生】

問1はいいとして、問2はだめでしょう笑 これは、知覚のテストになってしまった1学期からの反省で、感受やイメージなどを答えさせようとしているのだと思います。しかし、これは授業で扱っていない内容ですよね。タイトルを考えるような活動をした授業があったのならいいと思います。もちろんしていません。

【2013年度 1学期の2年生】

だんだんとブラッシュアップされてきたのが分かります。

問1、問2は授業でやった内容なので、整合性が取れていますね。注目すべきは問3です。

これは私の音楽教育のポリシーとも言えるもので、私は「良い聴衆」を作るために仕事をしています。表現、つまり楽器を弾いたり歌ったりすることって卒業後はなかなかしないもの。しかし、耳は日常的に音楽を聴いていく生活が続きます。その際に「自分ってこういう音楽が好きだな」「自分はリズムが派手なのが好きだな」「このバンドの歌詞にこのメロディが乗るから好きだな」「私ってこういうギターの音色は苦手」など、自分なりの尺度を持って音楽に接してほしいのです。ただ漠然と浴びるように音楽メディアにさらされる時代です。このような時代だからこそ、各個人が音楽へ接する時にきちんと考える力を養っていきたい、ということが私のポリシーです。

授業でやった中身ではないことは承知の上、しかも、これにはマルもバツもつけられないのも分かっています。定期テストの集中力を利用した、生徒たちへの啓蒙のつもりで出題しています。

【2014年度 1学期 1年生】

問1ではヴィヴァルディの「春」の授業を受けて、ソネットとの関連。リズム創作をやったので、問2はリズムの問題。これは整合性がとれていますね。問3は前述の「好み」に近い問題です。

【2014年度 2学期 1年生】

ここでは歌曲「魔王」で勉強したことが出題されています。問1は教材曲なので、うっすらでも覚えている生徒は答えられます。しかし、問2は3つの音楽から歌詞にあったものを選ぶというもの。これはかなり難易度が高く、しかもイメージの話になってきます。選んだ「Halt!」という曲も中学生にとっては歌詞にこれといった音色や前奏もなく、苦労をかけたと思います。しかし、メモ欄を用意したり、工夫が見て取れます。出題として一歩前に進んだ作品。

あとは初任校では2017年度まで似たりよったりの問題に終始しています。転勤先では少し問題のレベルをあげて臨んでいます。 

【2017年度 後期 1年生】

合唱活動などを中心に行ってきた学期では鑑賞領域の内容を問えない時があります。その時は関心・意欲・態度に直結するような、「練習方法」を問う問題を出すことにしました。もちろん、良いところや改善点を書かせるような内容は知覚・感受の力を計ることに資するものですね。

【2018年度 前期 3年生】 

問1は「交響詩 ブルタバ」に関する問題。授業の繰り返し、教科書に表記のある楽器の問題で大したことはないのですが、問2は攻めまくってますね。「交響詩」を学習したことから、物語と音楽の関連性、また、その関連性がどのぐらい深いのかを考えさせる問題です。これは好みを超えて音楽の社会的な価値まで目を向けさせる問題ですので、かなりレベルが高いと思います。生徒たちはそれぞれに頑張って記述していたことをが思い出されます。

その後は転勤し、公立の中学校に戻りましたが、鑑賞領域の授業は特に充実を見せていたため、特にレベルは考えずに同じようなものを出題することしました。また、解答欄を大幅に大きくし、答えやすいような工夫を施しました。授業のワークシートと合算して評定に関わる評価をしていくところです。 

【2021年度 3学期 1年生】

これが今の聴き取りテストです。「春」の問題はいつもとだいたい同じ。問3もいつもの「好み」を問う問題です。特筆すべきは問2です。生徒の記述例は以下のようなもの。

①伴奏と歌詞の情景との関係

・伴奏はちょっと歌詞で強めのことを言ったら伴奏の強さも変わっていた。

・前半は語り手に合わせて静かな音色だった。後半は語り手が感情的になっていくにつれてピアノの音も大きくなっていった。静かな涼しい夕べの時間や「おやすみなさい」と言っていたことにピアノが合っていた。

・なめらかな伴奏で恋をしているのが分かった。なめらかだったのが急に変わって強弱が出てきて、好きって気持ちが強くなっていくのを感じた。

②声の音色と歌詞の関係

・言いたいことによって強くなったり弱くなったりして強弱がはっきりしていた。

・年老いた親方は低い声でかわいらしい娘は高い声で歌っていた。後半は主人公の願いが一気に声に出された感じで、大きく力強く歌っていた。

・最初はやさしくきれいな音色だったが、どんどん思う気持ちがつよくなっていって、主人公がすごい好きだという気持ちが伝わってきた。

いかがでしょうか。中学生ってすごいですよね。

このような記述であれば「魔王」で勉強する、「言葉と音楽の関連性」の評価は十分すぎるほどできますよね。

このように、ちょっとずつブラッシュアップしてきた聴き取りテストですが、何より採点が楽しいです。生徒たちが自分の価値観に照らして頭を一生懸命使いながら、音楽に全力でぶつかってくる姿は、授業を超えるものがあります。

リズム、旋律の概念の理解からスタートしたこのテストですが、このテストがあることを前提としていると授業づくりが変わります。音楽教育への携わり方は人それぞれですが、私なりにやってきたことをまとめました。毎回作るのも採点するのも楽しいです(特にApogeeのオーディオインターフェースを買ってからは至極の喜び)。稚拙な内容ながら、ライフワークのご紹介でした。

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